それでも彰人は「お待たせしてすみません」と努めてにこやかに挨拶を交わすと、早速一番奥の端席で迎える安藤冴子の左隣に佐竹を座らせた。


 嬉しそうに佐竹に自己紹介をしている冴子を見てやれやれと思いながら、彰人は空いている佐竹の左隣の席に座った。こうして完全に佐竹をガードしたわけである。


 すると今度は、冴子が後輩の女性に彰人の隣に座るように促した。

 冴子の気遣いに感謝せねばならないのであろうが、これは彰人にとって思いもよらないところであった。


 とはいえこれが楽しくなかったというわけでは決してない。

 彰人の隣に座った真理江の後輩の女性が愛想よく彰人の話に相槌を打ってくれ、それはむしろ彰人をいい気分にさせた。




.