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 綾乃はこの日も町田の自宅に居た。

 相変わらず何かをするわけでもなく、良く言えば安穏とした一日が、今日も何となく終わろうとしていた。


 祥吾の母親から電話を受けたのは、22時を過ぎた頃だった。

 思いも寄らない突然の知らせは妙に現実味がないもので、綾乃には何がなんだか分からなかった。


 祥吾が意識不明であるということ以外に情報のない中、「とにかく病院に向かおう」と焦る綾乃の両親は、呆然と立ちつくす綾乃を引っ張るようにして車に乗せ、祥吾が運ばれたという病院へと向かった。


 車中、綾乃の母親が何かぶつぶつと不安を口にしているようであったが、綾乃には何を言っているのか全く理解できなかった。


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