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 真理江たちが新人歓迎会に興じる頃、祥吾の勤める広告代理店のIT事業部が置かれたフロアには、まだ灯りが付いていた。


 事業計画書の見直しを始めてから一週間が経ち、祥吾やその後輩たちの頑張りもあって、ようやっと目処が付く所まで来ていた。

 残すはプレゼンテーション用の書類作り、それも書面にまとめる為の最終的なツメの作業だけである。


「この調子なら来週一番で出せるな」

「やー、今夜は酒が旨いぞ!」


 社員たちの顔には一様に安堵の表情が浮かび、昨日までとは打って変わり、社内の空気も和らいだものになっていた。


 祥吾の後輩たちにしてみれば、新規事業に携わるのはこれが初めてであり、それは自らの手でやり遂げる事の面白さを覚えるのに十分な要素となり、今まで感じた事のなかった達成感を各々が強く抱く事となった。


 また万事上手く行き、新規事業が立ち上げられた後も、祥吾の元、このメンバーで仕事をしていくのが楽しみにもなっていた。