「初めまして、中瀬っていいます!」

 真理江が隣を見れば、まだ少年のようなあどけない笑顔を浮かべた中瀬という新入社員が、きちんと正座をして座っていた。

「こんにちは。 中瀬くんて言うのね?」

「はい! よろしくお願いします!」


 初めて会う中瀬という若い社員の真っ直ぐに輝く瞳が、今の真理江にはとても羨ましく思えた。

 そして隣の席が若い中瀬であった事で、真理江は随分と気持ちが楽であった。


 気を遣うこともない、わざわざ仕事の話をすることもない。

 何より、「自分にもこんな時期があったんだな」と、なにか懐かしい気持ちが真理江を包んだ。


 真理江は中瀬の大学時代の話などを聞きながら、久しぶりに美味しいお酒を飲むことができた。


 途中、彰人から席替えの提案などもあったが、

「小島さんってば、コンパじゃないんですから」

と言って、それは冴子によってあっさりと却下されたのだった。







〜『ベイビーたちの悲劇』 真理江〜