「おじちゃん、誰?」


ハゲ天使。あんた死ぬよ?


「おじちゃん…?」


その時の慎一さんの顔は、お化け屋敷の雰囲気よりも怖かった。


「お嬢ちゃん、今何て言った?」


慎一さんはハゲ天使のアゴをつかんで揺さぶった。


「おい、真知子。お前綿棒持ってんだろ」


慎一さんは女性が化粧直しに綿棒を使うことを知っているようだ。


「持ってますけど…」


「貸せ、早く!」


私は綿棒を渡した。


「お嬢ちゃん、口の聞き方に気つけんと、この綿棒、鼻に入れて鼻水かき回すで?」


…子供相手に脅迫ですか。


「…ごめんなさい」


半分ほど鼻に綿棒を突っ込まれたハゲ天使は半泣きだった。
大和くんもビビっていた。


「あの…慎一さんは何故ここに?」


私は恐る恐る聞いた。


「張り込みしててん」


「張り込み?」


「俺、刑事警察官やねん」


…………………はい??
刑事が、子供相手に脅したりしたら問題なんじゃ…。


「犯人を捕まえた後、犯人をイジメまくんのが、俺の楽しみや」


完璧なS男ですね。


「真知子、修司呼べ!」


「え、でも花粉症…」


「俺に逆らうんか?」


慎一さんは綿棒を私の鼻に刺した。


…これは脅迫だ。この人を誰か捕まえて下さい。
…とか思いつつ、私は修司くんに電話をかけた。