いつもは修司くんに振り回されっぱなしの私だけど、今回は私が悪いよね。
てゆうかこの山、熊出るとか聞いてなかったんですけど…。


「真知子ちゃんのチョコ無事だよ、ホラ」


……ちゃんとチョコまで拾っててくれたんだ。


「開けていい?」


私は頷いた。
これは、一応遭難のうちに入るのだろうか…。


「あ、美味しそう。これ何?」


「フォンダンショコラ…初めて作ったから自信無いけど」


修司くんは気にせず食べた。


「うん、美味しい」


修司くんはそう言って微笑んだ。
被害妄想が無ければ、本当に最高な彼氏だよね。


「…ありがとう」


私は初めて自分からキスをした。


一時間後、私達は救助された。


「何でガケから落ちたりなんかしたの?」


救助員の人が私達に聞いてきた。


「だって熊が出たんですよ」


「熊?こんなとこにいるわけ無いでしょ。いたとしてももっと山奥だよ」


でも私達は確かに見た。


「あ、もしかして」


救助員の一人が思い出した様に言った。


「1ヶ月前にリアルな熊のきぐるみを来た友人が行方不明になったんだよ」


…?


「グァァアー」


「やっぱりー!武田だな!!お前すっかりなりきっちまって…」


……武田。どっかで聞いたことがある名字だ。


救助員の一人が熊の頭を上に引っ張る。


――――スポッ


熊の頭が抜けた。