「修司チョコ食べへんで」


私と由梨と慎二くんで遊んでいたとき、慎二くんがそう言った。
修司くんはバイト中。


「エッ!?修司くんチョコ嫌いなの??」


私は慎二くんに近付いて聞いた。


「嫌いちゃうよ。いつもカバンにチョコ入れてる」


「じゃあ何で…」


私はマジマジと聞いた。


「『チョコは遭難した時食べるものだ!』って言ってた。普段は食わへんで。いつも大量にもらうチョコは遭難した時の為保存してるらしい」


……ナニソレ?
一年に一度の乙女の日。そのチョコを『遭難した時の為』?


「チョコ以外にしたら?アイツ、プリン好きやで」


……プリンて。バレンタインにプリンて。


「ちなみに俺、トリュフが好きー」


アンタの意見は聞いてません!


「じゃあさぁ、真知子!自分の体にチョコ塗って、『アタシを食べて♪』にしなよ!『早く食べないと溶けちゃうぞ』って言ってさぁ~。バレンタインの定番じゃーん!」


……定番なんですか。


「うわー!俺もそれがいいなぁ!!」


慎二くんは喜びながら由梨を見ている。


「私はやらないよ。恥ずかしいもん。」


……オイ、由梨。アンタ…その後の慎二くんのがっかりした顔ったらないです。


「ね?クリスマスはイマイチだった訳だし、バレンタインこそは!」


由梨はそう言って可愛くウインクしてみせた。


「…分かった。やってみる!」


「真知子ちゃん、今回燃えてるね~。」


慎二くんも指を鳴らして私を差した。


「……って、するワケねえだろ!!」


私は二人に突っ込みを入れてその場を去った。