被害妄想彼氏

「真知子ちゃん!」


温泉旅行に向かう待ち合わせ場所のバス停。修司くんがやってきた。


「修司くん。」


私は、修司くんの後ろにいる、大きな人に目を向けた。


「……?修司くんの知り合い?」


私がそう言うと、修司くんが振り向いた。


「あ、さっきの」


修司くんは言った。


「ハイ!武田力です!修司先輩も旅行ですか?しかも彼女と。うらやましいなあ~」


はっはっは、と笑いながら、こちらに近づいてくる。


「自分は、旅行もかねて父の出張先に行くでごわす。」


……別に誰も聞いてないから。


「ご一緒させてもらっていいっスか?一人で行くから寂しかったんでごわす。…あ、お邪魔っスかねぇ」


…………当たり前だろ。



目的地到着。
バスの中であのおデブちゃんはずっとマシンガントーク。私も修司くんもすでに疲れ気味。


「お疲れっスかぁ?」


…誰のせいだよ。


「あッ。親父!」


デブが叫んだ。
私はまた勝手にあだ名をつけた。


「おー、力。父さんも今仕事終わったら所だ。…ん?後ろにいるのはダチか?」


「違うよ、修司先輩」


「修司くんて…あの?」


デブはうん、と頷いた。


そっか、デブと修司くんはいとこなんだよね。さっきバスの中でデブが一人で話してたっけ…。


てことはこの人は修司くんの叔父さんってことかな。