被害妄想彼氏

『いい?修司。もし私とお父さんに何かあったら、皆川 達弘さんの所に行きなさい』


皆川達弘。現在の父。


『なんで?』


母は俺の耳に口を近づけて言った。


『アンタの本当のお父さんだからよ』


…………当時は意味が分かっていなかった。
母は死ぬ前に今の父にその話をし、一家心中の前に俺を今の父に預けたんだ。


俺は小さいながらも叔父だと思われる人にその事を話したんだ。


「ていうか………親父、今三十路だけど…」


俺を作ったのは何歳の時だ?
十二歳??


(犯罪じゃん!!)


「…修司?」


親父がドアをノックしている。


「な…なに?」


考え事をしていたのでどもってしまった。


「お前、早く連れてこいよ?」


親が言う。


「真知子ちゃんのこと?」


「ああ…なんか年感じるな。お前が結婚なんて」


親父はフッと笑った。


「幸せになれよ」


親父はそう言うとドアを閉めた。
喜んで…くれているのだろうか。


「親父…産んでくれてありがとう」


聞こえるか聞こえないか分からない声で呟いた。
俺は真知子ちゃんを幸せにする。そうすれば俺も幸せだ。


俺は携帯を開き、真知子ちゃんに電話をかけた。


「…もしもし?今からそっち行っていい?」


「え?今?」


「うん、そう。今。」


「い、いいけど…?」


「じゃあすぐ行くから待ってて!」


俺は家を飛び出し、真知子ちゃん家に向かった。
決して家が近いってわけでもないんだけど、自転車をこいでなんとか到着した。