被害妄想彼氏

家に帰ると、リビングには親父がいた。


「おゥ。遅かったな。」


親父、帰ってたんだ。


「…親父」


「ん?」


「なんで親父は、俺を育ててくれたんだ?」


俺は前から思っていたことを今日、単刀直入に聞いた。


「…なんだよ、イキナリ」


「いや。なんとなく」


すると親父は小さくため息をついた。
「初めは、お前を借金のカタにもらっていくつもりだったんだ。


十年程前にお前を売り飛ばす話あっただろ?」


「………あったね。」


「でもなあ、惚れたオンナの子供だし。借金は後々お前の叔父にあたる人が返してくれたんだよ」


ああ…武田の叔父さんの事か…。


「惚れたオンナ?」


「お前の母ちゃんの事だよ」


親父は真剣な顔をして語った。


「本当はお前を叔父に育ててもらう話があったんだよ。見ず知らずの俺が育てるよりは全然良いって思ったからな」


「じゃあ何で今まで…」


「…お前、覚えてないのか?」


「え、うん」


「まあ、いいや。明日も早いしもう寝るわ。おやすみ」


親父はそう言って寝室へ向かった。
俺は自分の部屋へと向かった。そこで、俺は写真立てに目を向けた。


…俺が三歳の頃、まだ、両親が生きていた頃の、家族写真。


母の顔はどことなく真知子ちゃんに似ている。


…………あ。
母の顔を見て思い出した……