「……やっぱり、か」


三澤は、誰にでもなく呟いた。

確かに、薫さんは優しい目をしていた。
しかし、それ以上におばあさんは優しい目をしていた。


優しく、死を受け入れる目を。



「……くしっ!」


くしゃみを一つ。


「あー………」


どうやら、昨日の上半身裸で帰ったのが、良くなかったようだ。
長倉の服を奪えばよかった。

三澤は、小さく後悔をしながら、帰途についた。




三澤斗春はこうして、この家を後にした。





そして、二度と訪れることはなかった。







『三澤斗春と優しい殺意。』――――了。