篠宮の旦那様には3人のお子様がいらっしゃいました。


長男の雅之様は16歳。

長女の由里様は13歳。


次男で末っ子の和人様はお兄様、お姉様方とはひとりだけ歳が離れていて、旦那様の目が行き届いていらっしゃらない様に感じられました。

お母様は若くしてお亡くなりになり、和人様はご養育を任せられた家庭教師の方と、毎日を過ごされておいでのようでした。

使用人としてはまだ未熟な私ではありましたが、和人様と年が近い事もあり、時折お世話をさせて頂く機会がございました。



――ある日のこと。

和人様は庭で絵を描かれていました。

「何を描いていらっしゃるのですか?」

私の問いかけに、

「何でも。ここから見えているもの。」

和人様はそう答えられました。

「お姉様に見せるの。」

和人様の満面の笑み。

お姉様・・・由里様の事を和人様は慕っておいでのようでした。

それは弟としてなのか、それとも恋心であったのか・・・。

その頃の私は深くは考えてはおりませんでした。