砂に書いた文字を、手でなぞる。


蒼…この6年間は

あなたにとっては




どんな時間だった?




もしあなたが他の誰かを


愛していても




あたしはいま


あなたに逢いたい……




逢いたい……












「……また…泣いてんのか?」












波の音に交ざり、誰かの声が聴こえた気がした










「………絢音…」











あたしを呼ぶ声が聴こえた









あたし…また夢を見てるの…?


わかってる

これはまた夢なんだって




だって何度も夢を見た


触れたくて

手を伸ばせば消えてしまう




蒼…って

何度呼んでも



あなたは振り向いてくれない




またあたしは
夢を見てるの




目を覚ましてあたしはまた


涙を流すんだ




蒼がいない現実に

涙を流すんだ…




「……絢音」




後ろを振り返ると


彼が立っていた…―――。



ここにいるはずない。




わかってた


夢ならいつでも逢えたから




目を閉じればいつも


あなたがいた




あたしはまた幻を見てる


でも幸せな夢を



もう少しだけ、見させて




夢ならお願い


冷めないで………






「……絢音…逢いたかった…」




夢で見る蒼は


幼い蒼

高校生の蒼

20才の蒼




幻を見てるはずなのに




いまここにいる蒼は


あたしの知らない




20才の時よりもっと…


大人になった蒼……。