“絢音…っ”


ここはどこなんだろう…真っ暗で何も見えない。




“絢音……絢音…”


あたしの名前を呼ぶ、この声は誰なんだろうか…




“愛してるよ…絢音”


……蒼…暗闇の中に蒼が立ってる。




“…絢音…じゃあな…”


蒼が…暗闇に消えてく…




“待って…待って…!”




「蒼…っ!」




パチっと目を開けると、白い天井だった。




「…ハァ…っ…ハァ、ハァ…また夢……」




ものすごい汗の量をかいている。


息も荒くなり、胸のあたりを押さえた。




――…20才のあの日、


あたしと蒼は別々の道を選んだ。




あれは、あたしたちの愛の誓いでもあり、


運命を信じた別れでもあった




縛りつけたくなかった



時間は思い出に変えていく
淋しさや傷は



時間が癒してくれる



けどやっぱり

忘れられないものがある



想いは

好きな気持ちは



時間とは関係ない



ずっとずっと変わらない



……好きだよ




生まれてきたのは

誰かを愛する為



蒼という世界でたった一人の人に


あたしは

最初で最後の恋をした




それでも信じたかった


あの選択は間違ってなかったんだって。




台所で水を一杯飲もうと思い、フラフラと布団から起き上がった。




――…ガシャンッ


電気を付けなかったから、ヒジでテーブルの上にあったコップを床に落としてしまった。




破片を拾い集めていると、一瞬ゾッと寒気がした。




何か嫌な予感がした。




……蒼に…何かあった…?