拓真は優しいんだよ。
みんなに優しいんだよ。
でも私には
もっと優しいの。
「…なんでこんなに、私の為に…いっぱいしてくれるの?」
「え…っ…」
拓真は、私の両肩を力強く掴んで、目を閉じて顔を近づけてくる。
「…マセガキッ」
私がそう言うと、拓真は目をパチッと開けた。
「てめぇ…マセガキとはなんだ?」
「だって…キスしようとするから」
「…愛空が…鈍いからだろ…?」
「鈍いって…ひどい!…なにため息ついてんのよ」
拓真…スネてるみたい。
かわいい…
「私…拓真といるとラクだよ…」
「えっ?…マジ?」
一瞬で笑顔になる拓真。
本当に単純なんだから。
「うん…本当」
「ヘヘッ…なぁ…愛空…」
拓真は、真剣な眼差しであたしを見つめる。
「…あのさ、…おまえが父ちゃんを好きで、大切だから頑張ってること…俺はちゃんと知ってるから……」
拓真……私はね
拓真が…優しい人だって
ちゃんと知ってるよ
「いつもおまえだけを見てるから」
この島に来てから
いつも笑わせてくれたのは
拓真だったから