蛍って…なんかすごく




幻想的で




美しいって言葉は


きっと、
この為にあるんだって

そう思った




「なぁ、愛空」




「ん?」




拓真に右腕を力強く掴まれた。




「あともう一つ、見せたいモノあるんだけど…」




「えっ?…何?」




「蛍ぐらい…綺麗なモノだよ」




そう言って、拓真は、私の腕を掴んだまま、丘の上へと連れていく。




「なにこれ……こんなの見たことない…」




驚きで口元を手で覆った。




「今日は見れるって、ニュースでやってただろ?」




「星が…降ってる……」




たくさんの星が

降り注ぐ




手を伸ばしたら

指先で掴めそうだよ




遥かな世界も

私たちだけのものみたい




こんなの初めてだよ……




こんなに素敵な景色を見るのも




こんなに胸が熱くなるのも




初めての感情を教えてくれたのは…




……君だったよ




丘の上で拓真と、降り続ける流星群を時間を忘れて眺めていた。




「ありがとう…拓真」




「愛空と見たかったんだ…」




「こういうの、感動っていうのかな…?」




そう言うと、拓真はその場に生えていた花を一本抜きとった。

その花で輪を作って、まるで指輪みたいにして、私の目の前に差し出した。




「拓真…これ…」




「いつか、本物やる…っ」




拓真は、私の左薬指にそっと花の指輪をはめた。




“いつか…本物やる…”