「ちょっと…拓真待ってよ…っ」




私は拓真の後を小走りで追いかける。




「どこ行くの?」




「あとでの、お楽しみっ」




ニコっと笑顔で答える拓真は、森の中をどんどん進んでいく。




「こんな真夜中に危なくない?」




周りは背の高い木ばかりで、暗い。鳥の声が不気味に聞こえる。




「大丈夫だって」




「ちょっと怖い…」




拓真の背中にしがみついた。




「…俺がいるじゃんか」




拓真は前を向いたまま呟く。




「な、なに…かっこつけてんのよっ!」




なんか…胸がぎゅうっとなる。




「んぁ?…愛空のことは…俺が守るよ」




「………拓真」




拓真は優しいんだって、知ってるよ…




「行こうぜ!」




「うんっ!」




しばらく歩くと、森の中に水が流れている所があった。




「なに?ここ…」




「こんな場所、知らなかっただろ?」




「うん……」




「ほら、よく見てみろよ…」




拓真に言われ、辺りを見渡すと、ぼんやりと光る物があちこちに見えた。




「わぁ〜!…これ…もしかして…蛍?」




「あぁ…まだ見たことなかっただろ?」




蛍…すごい…


幻想的で…夢の中にいるみたい…




「うん!…すごい…綺麗…!」




「愛空はまだ、島に来て1年ぐらいだもんな?」




「うん…蛍見たことなかったぁ。すごぉーい…」




「へへっ」




私の顔を見つめて笑う拓真。




「なに?」




「いいや別にっ」




拓真は優しいんだよ。


みんなに優しい。