「いえいえ、こちらこそ…本当に突然来てしまい、申し訳ございません…」
あたしも深く頭を下げた。
「愛空は、絢音先生のこと、すごく好きみたいですね。よく絢音先生のことを僕に話してくれますよ」
「本当ですか?いや〜耳を塞ぎたいですねっ。なんせ本当にドジなので…」
「そんな…まっすぐで無邪気で…優しい先生だと言っていました。あっ!なんでも…佐伯先生と結婚なさるとか…?」
「それ噂ですから。まだこの島に来て3ヶ月ですよ?」
「ハハハ…噂なんですか?愛空は真剣に話してましたけどね。佐伯先生は、島でもイケメンだと有名ですからね」
愛空のお父さんは、大きな声で笑っていた。
「…私には、ずっと想ってる人がいます」
「そうなんですか?」
「はい…色々とありましてもう6年ほど逢ってないですけれど」
「6年も…?」
「私のこと…少し話してもよろしいですか?」
何で話そうと思ったんだろう…?
「どうぞ、先生と生徒の父の関係ではなくて、ここの島に住んでいる友人として聞きますから」
愛空のお父さんは優しい笑顔であたしを見つめた。
「…ありがとうございます」
蒼のことを人に話そうと思うなんて自分でも驚いていた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)