あたしは大学を卒業して、小学校の教員免許を取り、パパと二人で暮らしていたあの家を出て、一人暮らしを始めた。




でもなかなか正式採用が決まらなくて、臨時教諭を繰り返して、いまは、この離島で夏子先輩の産休中、小学3年生のクラスを受け持っている。




――…ガチャ




アパートに帰るなり、ポケットの中の携帯が鳴った。




…美々ちゃんからだった。




「もしもし?美々ちゃん?」




“絢音ー?どぉ?島の暮らし慣れた?”




「最初、コンビニなくて焦ったけどね」




“ないの?”




「コンビニみたいなのはあるけど…。でもここの島は食べ物おいしいし、近所の人が色々くれるの」




“へぇ〜優しい人多くてよかったじゃん。心配してたんだからね?あっ…夏子先輩は元気?”




「今日、お見舞い行って来たよ。元気そうだった〜」




“そう、よかった〜。でも絢音が先生なんてね〜。ホントにいまだに信じらんないわ”




「もぉ〜!でも今日ね、学級委員の子に“子供っぽくて無邪気な絢音先生が好き”って言われちゃった。あたしもまだまだよね。ホントに、今時の子供たちってしっかりしてる」




“完全に、発言がおばちゃんになってきたね絢音。まぁ元気そうで何よりよ”




「…あのさ、美々ちゃんは、ケンちゃんと結婚とか考えないの?」