「蒼…もう行くね……」




そう言った絢音の顔は、穏やかな笑顔だった。




「ん………」




これは…さよならじゃない




悲しい別れなんかじゃない




そう自分に言い聞かせていた




絢音は、俺に背を向けて歩きはじめた。




いまなら間に合う




追いかけて




抱きしめて




離れんなって


そばにいろって




そう…言いたかった




「…蒼ーーっ!!がんばれーーっ!」




絢音が遠くで振り返り、叫んだ。




「絢音ーーーっ!絶対に迎えに行くからなぁーーー!!」




俺は、声の限り叫び、手を振った。




アイツは最後まで泣かなかった




アイツの姿が見えなくなると、俺の頬には一筋の涙が伝った…――。




本当はずっと俺


涙を堪えてた




でもアイツが泣かないから




「…絢音……」




何度叫んでも




もう届かない




「情けねぇ…な……俺は……」




男のくせに




「…必ず迎えに行くから……」




俺……弱すぎる




俺はひとり呟き、歩きはじめた……。