――……ベッドの上、裸の二人
俺の腕枕に絢音は頭を乗せ、毛布をかけた。
まぶたが重くなり、ウトウトとしてきた頃、絢音はそっと呟いた。
「…ねぇ…蒼は将来なにになりたいの?」
「…ん?…将来……?」
俺は今にも眠ってしまいそうなぐらいな感じでぼんやりと答えた。
「うん。大学卒業したら、どんな仕事したいだとか…ってこと」
「ん~……まだ考えてないなぁ」
「……あたしもなんだ」
「……ここ何年も、毎日ただ日々に追われてるって感じだったかんなぁ…考える暇っていうより、余裕がなかったっていうかさ……」
「…うん、そだね……蒼、眠そぉ…もぉ寝よっか…」
「ん……そぉだな……おやすみ……」
「おやすみ……蒼」
俺は絢音の身体を包み込むように抱きしめて眠りについた。
暖かいぬくもり
心地いい落ち着くな…
絢音が隣にいてくれる
それだけでいい
けど君は
きっと眠っていなかったんだろうね
俺の寝顔をずっと
眺めていたの?
それとも俺を起こさないように
静かに涙を流していたの?
絢音………
なぁ…遊也
“一番大事なこと”
絢音はちゃんとわかってたよ
この時の俺はまだ
わかってなかったんだ
一番大事なこと
いまの俺たちに……そう、それは……―――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)