波打ち際にボーッと立っている蒼は遠くを眺め、俺と目を合わせなかった。




「蒼……。なんや…今さら。こっち見ろや…」




「ごめん、遊也…」




振り向く蒼に、俺は満面の笑みで返す。




「…おまえとはずっとライバルやった。いろんなことあったな…傷つけあったり…せやけど、おまえはずっと友達でいてくれた…」




「…あたりまえだろ」




蒼が俯くと涙が一粒、海の中に消えた。




「今日なぁ、蒼たちがここに来る前にな、絢音が…蒼のそばやなくて…俺のそばにいるって言い出したんや」




「……うん」




「うん…って。…いい加減にしろや…。俺はそんなん望んでないんや。何回言えばわかるんや、おまえらは…」




「絢音が決めたことだから……」




「…小さい頃からずっと、お互い誰よりも想ってきたんやろ…?」




ずっと二人が

羨ましかったんやで




「…おまえらと出逢って、俺がいくら絢音を好きでもな、俺が入る隙間なんてこれっぽっちもなかったんや。…色々あった。せやけど、いろんなことあって、さんざんお互い傷ついたやろ?さんざんすれ違って…答えは見つけたはずや…」




心から願う



いまは

二人に笑っていて欲しいと




「もう二度と、絢音を離すな…っ!」




俺は蒼の頭を軽く殴った。




「初恋は叶わへん…?そんなもん信じんなや。叶えるんや…二人は絶対に幸せにならなあかん…」




「…遊也」




「絢音を幸せにすると約束してくれや…俺も安心して死ねへんやんか…」




「…………」




「何を黙ってんねん…」




「わかった……」




「声が小さいわ…っ…聞こえへん」




「絢音を幸せにするって…約束する」




ほんまに

手のかかるヤツらや



俺の大切な人間たちは……



でもまたそこがたまらなく愛しい