幼なじみ〜first love〜

病院の自動ドアを出てすぐに左手を上に挙げると、病院の前に待機している何台かのタクシーの1台が素早く目の前に止まった。




「俺が前に乗る。ケンと美々は後ろに乗れっ」




俺たち3人は、慌ててタクシーに乗り込んだ。




「お客さんたち…どこまで?」




「○×海岸まで、大至急でっ!!」




「こんな時間に、海岸に行くのかい…?」




「おっちゃん…!いいから急いでくれよっ!」




ひとりの命が…いや…


あいつらの命が




かかってんだ




タクシーの中で俺は、あの時のことを思い出していた。




小学5年の夏休み、最後の日のことを……




遊也の双子の弟である

智也が海に消えた



あの日と重ねてしまっていた……―――。




タクシーを走らせること30分、あの海に着いた。




光景も何もかも、あの日と重なる…俺は違うと目をぎゅっと瞑り、首を横に振った。




夜の海は、深い闇のようで、俺は恐ろしささえ覚えた。




あの時の記憶が鮮明に甦る。




ザザザーーーッ……ザザザーーーッ……―――




浜辺は、波の音で包まれる。砂浜を走ってく足が、何故だかとても重く感じた。




この砂に埋もれてしまうのではないかと、思うほどに………




海岸沿いの道路の街灯で、砂浜に少しだけ明かりが照らされている。




何もかもあの日と同じだった。




――…ここまでは。




視線の先には、遊也と絢音の姿が見えた。




遊也は、裸足で波打ち際で波を蹴ったりしていた。




絢音は少し下がった場所でしゃがみこみ、遊也の姿を眺めていた。




「おまえらぁ…っ!どしたんやぁ…?お揃いで…」




遊也は、俺たちの姿に気付き、笑顔で俺たちに手を振っていた。