私の名前を呼ぶ声がした。




「沙羅ぁ…っ!!」




そこには、蒼が息を切らして立っていた。




「…沙羅…っ…なにしてんだよぉ…っ!!」




蒼が大きな声で叫ぶと、私の方へ近づいてきた。




「来ないで…」




「え…っ…」




「来ないでよ…っ!」




私は思い切り叫んだ。




「沙羅…危ないだろ…?」




蒼は私に手を差し伸べたけれど、私は手を取らなかった。




「何、バカなことしてんだよ…早く…来い」




「それ以上、沙羅に近づいたら…沙羅ここから飛び降りるからね…」




「沙羅…っ」




「よくここがわかったね…蒼」




「そんなことより、危ねぇから早くこっちこい!」




蒼は必死に叫ぶけど、私は目を背けた。




「沙羅がどぉなったって、蒼には関係ないじゃない…っ!」




涙が頬を伝う。




「沙羅、何言ってんだよ…関係ないわけないだろ…?」




「蒼は…あの子を選んだんでしょ…?」




許さない…絶対に




許さないんだから




蒼だけ幸せになるなんて




ずるいよ……




「前に言ったじゃない…!沙羅は、蒼がいなかったら死んじゃうって…」




「……沙羅」




「沙羅には…蒼しかいないんだよ……」




絞り出した細い声


でも本当の気持ちだった




沙羅には

蒼しかいないんだよ




蒼がいれば

他には何も




いらないんだよ