その夜、沙羅は俺に黙って出掛けて行った。




俺はコンビニにでも行ったのかなと思っていた。




しかし、沙羅は、なかなかアパートに帰ってこなかった。




部屋の時計を見ると、0時を回っていた。




沙羅の携帯に電話をかけても、留守電になってしまう。




心配になって、俺は近くまで沙羅を探しに出掛けた。




昼間降っていた雨は、止んでいたが、夜空に星はひとつも見えなかった。




「寒…っ」




体が一瞬震えた。




北風が冷たい。昼間の雨が雪にならなかったのが不思議なくらい、気温はかなり冷え込んでいた。




何度、沙羅の携帯に電話をしても留守電だった。




沙羅に何かあったんじゃないかと、不安にかられていた……




ピリリリリ…―――




その時、沙羅からメールが届く。




その言葉を見て、俺は目の前が真っ暗になった。




――…




“さよなら…蒼”




……嫌な予感がした。




すぐに俺は、沙羅に電話をかける。




呼び出し音が鳴り続き、留守電になってしまう。




――…繋がらない。




俺は携帯を片手に握りしめ、走り出した。




沙羅…嘘だろ…?




やめてくれ……




いなくなる……




また…俺のせいで

いなくなる…?




また誰かが…


消えてしまう……




これ以上…誰も


失いたくない……




どうか…無事でいてくれ




沙羅……―――