次の日、俺は遊也に会いに、緑ヶ丘病院へとやって来た。




この病院は以前、沙羅が声を失っていた時期に通っていた病院。




「……遊也」




白いベッドの上で、遊也はボーッと窓の外の空を見ていた。




「蒼…来たんか」




「大丈夫か…?何で入院なんて…」




「まぁ…ええから、そこ座れや」




遊也に促され、俺はベッドの横の小さな椅子に座った。




「蒼…おまえ、絢音となんかあったんか?」




「…………」




遊也に話さなきゃならない




「…遊也…ごめんな」




俺は頭を下げた。




「絢音と…より戻すんか…?」




遊也の言葉に俺は驚き、顔を上げた。




「……俺、わかったんだ。絢音しか愛せない…」




「そんなんずっと前から、知ってんねん」




「旅行の時、絢音がこのまま死んでしまったら俺は、どうなっていたんだろう…って…俺は絢音を失うことがこの世界で一番怖いんだよ…」




絢音を失うことは

俺の生きる意味を




失うこと




「沙羅には言うたんか?別れるって…言えたんか?」




「……昨日、言おうとした」




「言えなかったんやな…言えないやろぉな。間違いなく沙羅おかしくなるで?」




「でも、いつかは言わなきゃなんない…」




遊也が深くため息をついた。




「蒼、おまえ何で俺に絢音を頼んだんか忘れたんか?絢音のこと、おまえ幸せにできるんか?」




「……俺が絢音のそばにいたいんだ」




「感情だけで動くなやっ!………絢音の幸せがかかってんねんから…」




「…遊也…でも俺、やっぱり絢音じゃなきゃ…ダメなんだよ……」




俺と絢音との間には

たくさんの障害がある




結ばれない運命なら




その運命さえ

変えてやりたい