―――……



「…そんな遠くから、見て見ぬふりしないで、奪って来たら?」




蒼と絢音ちゃんが2人でいるのを、遊也くんは遠くから見つめていた。




「…別に見てへんよ。ちょっと休憩しとっただけや…俺まだまだ滑り足りひんし」




遊也くんは、雪をサッと蹴り上げた。




「いい人ぶって強がっちゃって…」




「沙羅さ…何が目的なんや?」




「……目的って?」




「いつの間にか絢音と仲良くなって、クリスマスに旅行…何を企んでんねん?………!…うッ…つー……」




遊也くんが頭を押さえて、いきなり雪の上でうずくまる。




「どしたの…?」




「…ーっ…ただの偏頭痛や…最近仕事が忙しかったんや」




「大丈夫?疲れてるんじゃないの…?」




遊也くんに手を差し伸べると、思い切り腕を引っ張られた。




そして私の耳元で彼は囁く…




「…これ以上、絢音を傷つけるヤツおったら、俺は誰でも容赦しぃひんで?」




冷ややかな低い声に背筋がゾッとした。私は彼を睨み付ける。




「…沙羅を脅してるの…?遊也くんだけは、沙羅の気持ちわかってくれてると思ったのに…」




「何がや…?」




「私たち…似てるもの…。遊也くんも沙羅もひとりぼっち…」




そして、今度は私が彼の耳元に囁く……




「沙羅は…遊也くんの味方だから…」




「そんなふうには見えへんけど?」




「そろそろ沙羅はホテルに戻るね。じゃ…」




冷たい雪の上に彼を残して、私は滑り降りた。




この計画は

誰にも邪魔させない…




幸せになる為だもの




パパ……

どうか見守ってて




私にはもう

蒼しか残されていない




たったひとり

かけがえのないモノ




二度と君が
迷わないように


私が導いてあげる