幼なじみ〜first love〜

「もう…蒼のこと…忘れるんや……アイツはもう絢音の知ってる蒼やない」




蒼はあたしの知ってる蒼じゃない。




「わかってる…」




蒼は沙羅を選んだの。あたしは遊也を選んだの。何度も、何度もそう頭で繰り返してきたでしょ?どうしていつも同じ壁にぶつかってしまうんだろう。あたしの心がいつも蒼の元へと戻ろうとしてしまう。




「絢音は…蒼を忘れられないんちゃう…忘れようとしてへん」




忘れられない

忘れようとしてない




遊也はそうやって


いつも

あたしの本心を見透かす




「蒼は…心変わりしたんや。絢音やない人を選んだんや……」




「そんなこと…!今さら言われなくてもわかってるよ…」




また遊也に酷い言い方しちゃった自分にいいかげん嫌気がさした。あたしはその場にうずくまり、顔を両手で覆う。




「俺が…いけなかったんや…。絢音を苦しませたんは俺や……」




「そぉやって…自分のことばっかり責めないで…。何もかもあたしなの…悪いのは…あたしなんだからぁ…」




「俺は逃げてたんや…絢音からも、蒼からもな…。絢音を甘やかすことしかできひんかった…」




「もぉ…やめて…」




「忘れるんや…もう」




うずくまっているあたしを抱き締める遊也の声は、とても悲しくて。あたしのことを本当に大切にしてくれてるというのはいつも伝わってくる。遊也は、自分を責めるけど、遊也は逃げてなんかいない。逃げてきたのは、あたし。




「忘れられない……」




忘れたくない…蒼のこと




記憶の中にしまうなんて




記憶の中だけでしか


逢えないなんて

笑い合えないなんて




「忘れるしかないんや。そしたらきっと、いつか…いい思い出になる…」