「泣くなや……」




優しい低い声で

遊也は




今まで何度くらい

あたしの涙を拭った……?




「……遊也のこと……好き……」




遊也の胸元にしがみついたあたしは、震えが止まらなかった。




遊也は、小さなあたしを包み込むように、優しく抱きしめる。




髪を撫でてもらうのも

慣れてしまうくらい



何度も

何度もこうやって遊也を



悲しませてきた




それでも遊也は

いつも優しかった



いつも何も聞かずに



遊也はただ黙って



あたしの涙を拭うの……




「…ねぇ…遊也……好きだよ……」




遊也が好きだと

自分に言い聞かせて


洗脳する




「……好きだよ……ごめんね……」




ごめんね…遊也




「……俺を好きやって言うんなら……もぉ謝んなや」




耳元で哀しそうな低い声が聞こえた。




「絢音に“ごめん”って言われる度に……俺のこと好きちゃうんやって…思い知んねん…」




「ちが…っ……ごめん…」




「また謝るやん……俺も…いつもいつもエエ奴でおられへんよ……」




「…あたし…甘えてばっかりで……ホントごめ…っ」




あたしは遊也の身体を突き放して、部屋を飛び出した。