――…それから約1週間が経ち、あの日から、蒼はまた一緒に住み始めた頃の蒼に戻ってくれた。
私が寝静まった真夜中に帰ってくるわけじゃなく…
派遣バイトの日以外は、大学の授業を終えると、真っ直ぐ家に帰って来てくれるようになった。
時計を見ると、夜の7時を過ぎた所だった。
私は、台所で鼻歌を歌いながら、クリームシチューを作っていた。
「〜♪〜ん〜♪…いい匂い〜っ」
鍋から、シチューの匂いがふわっと広がる。
―――…ガチャ
玄関が開き、蒼が頬を少し赤く染め、左腕をさすりながら帰ってきた。外がとても寒かったのだろう。
「蒼、おかえり〜ぃ!…ふふっ…ほっぺ赤いよ?」
「外、すっげ寒みぃーんだもん」
「だから今日はあったか〜いシチューだよっ!」
「さっすが…沙羅ちゃん」
そう言って蒼は、私の頭をグシャグシャっと撫でた。
「沙羅“ちゃん”…って。気持ち悪いんだけど…」
「ふっ…アハハハハッ…!」
蒼が私の顔を見て、お腹を押さえながら大笑いしていた。
「…フッ…鏡見てみ?…沙羅の頭…ボッサボサで…アハハハ…ちょーこぇぇー。貞子みてぇ…ハハッ…」
「蒼が頭グシャグシャにしたからでしょ〜!?もぉ〜っ!!」
私は、右手に持っていた、おたまを振りかざし、逃げ回る蒼を追いかけた。
「沙羅?先に風呂入んだけど俺。どこまでついてくんの?!」
「なっ…///…もぉっ!!蒼のバカっ!!」
私は勢いよく、お風呂場のドアを閉めた。
「蒼…ふざけてばっかなんだから…っ」
私は呟き、台所に戻っていった。楽しい毎日だった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)