幼なじみ〜first love〜

タバコの匂い…香水の匂い……




蒼の匂いは

沙羅を眠りへと誘う




大きな背中を抱きしめる


この感触……




ここは…暖かい


心地よい場所……




絶対に……離さない




沙羅の生きる意味は


これだけだから………




君がいるから


生きてゆける……―――。




蒼が沙羅の髪を撫でながら、口を開いた。




「…沙羅…声はいつ…?昼?病院は…?」




「……うん…突然で…嬉しいけど…まだ混乱してて…」




「…そっか…まいっか。でも…本当によかった…。俺…安心した…」




「…安心……?何で…?」




「何でって……」




「………」




「俺のせいで…一生、沙羅の声が出ないままだったらって…不安でしかたなかった……」




ドンっ……―――!!




私は、蒼の身体を手で押し退けた。




「…?どした?沙羅……」




俯くと、床にポタポタと涙の粒が流れ落ちた。




嘘だよ……

これは偽りの涙……なのに…




「…沙羅の…こと……捨てたり…しないよね…?」




声が震えるのは

どうして…?




「…急に…何言い出すんだよ……」




捨てないで…


ひとりにしないで……




「…声が治ったら…蒼は沙羅のそばから…いなくなっちゃうんじゃないかって……」




行っちゃやだ……


あの子のとこなんかに

行かないで…




「ずっと、ずっと…不安だったよ……」




声が震えるのは


本当の気持ちを

ずっと言えなかったこの気持ちを




君に話してるから…?




嘘で君を騙す悪い私と


寂しがりで弱い本当の私が




交錯する………




「どこにも…行かないで……蒼……」