同じ部屋に住んでいて、それでも私たちは、すれ違いの生活だった。




3ヶ月前のあの日、何があったのかは知らない。




あの日…蒼は、深夜2時過ぎに帰ってきて、部屋にすぐ閉じこもってしまった。




不安になった私は、ドア越しに座っていた。




部屋の中からは、蒼の泣き声が微かに聞こえた。




また…絢音ちゃんを想って泣いてるの…?何で涙を流すの?




沙羅がいるじゃん…沙羅じゃ…ダメなの…?




いつになったら

あの子を忘れるの…?




ねぇ…蒼


沙羅を見て……




こんなにそばにいるのに




沙羅ね……すごく淋しいよ……




蒼は…沙羅を選んだんでしょ……?




もう…あの子の為に




あの子を想って




泣いたりしないで……




お願い………―――






あの日から、

蒼は、沙羅が眠りに就いた夜中に帰ってくるようになった。




一緒に過ごす時間は、朝食の時間…10分だけ。




一緒に朝ご飯を食べて、蒼はいつも通り、沙羅に話しかける。




“大学でなんかあったか”

“DVD返しておいて”


“病院、次はいつ?”




…いくつかの決まった台詞ばかりだってことも知っていた。




それに対して、私は紙に返事を書くだけ…




蒼の様子がおかしいことに気づかないフリをして…




毎日…笑顔で家を出ていた。