―――――………

―――…




アパートの階段を静かに上がっていく。




きっと……


今日も君はいない……




コートのポケットから、鍵を出し、ドアノブに手をかけた。




知ってるよ…




もう…慣れたよ




君がいないことに




「おかえり」って言ってくれないことに




だって君は…私を避けてる




―――……ガチャ




相変わらずの、真っ暗な部屋だった。




蒼は……沙羅のこと


好きなんかじゃない




そんなの……




初めから…わかってたよ




でも…いつか




起こるかもしれない“奇跡”を期待してた




そばにいたら…なんて




甘かった




今ならわかるよ




叶うはずのない願いだったってこと




奇跡は絶対に起こらないってこと




“君が私を好きになる”




願いは


一生叶うことはない




それなら

何をしても蒼を離さない




最低だって

酷い女だって




人に何を言われても

かまわない




あの子には渡さない




絶対に

蒼は渡さない………