「…遊也…やっぱりなんかあった…?」




抱き締めた腕の中で、絢音が小さな声で呟く。




「何でや…?何もないって…」




「なんか…わかるの。腕…緩めて…あたしに顔見せて…?」




「…嫌や……」




「…頑固っ」




「俺…頑固やもん」




「ふふっ…知ってる。じゃぁ…もう少しこのままでいいよ…」




そう言って絢音は、俺の背中に手を回した。




絢音の小さな小さな手が

暖かかった




その暖かさに

溢れ出る優しさに




俺は

静かに涙を流した……。






アイツに…蒼に勝てるモノなんて


ひとつもない




絢音と過ごしてきた

時間も


思い出も


2人の想いも


2人の絆も




何一つ、俺はアイツに勝てない…




それでも俺が

絢音を愛していくと決めたのは




蒼と絢音の運命を

知ったから……




2人に未来や幸せなどないと




そう俺に言った蒼が




運命を変えようとしてるなんて思えへん




ムリやんか…

方法なんて何もない




蒼は絢音を幸せにできひん




迷うなや…蒼


絢音を想うなら




本気で…死ぬ気で


愛してるなら




おまえらが結ばれることはないんや……




「…絢音……」




「……ん…?」




「……愛してる……ずっと…」




ずっと、ずっと…

おまえを…愛していく




蒼との未来に

幸せなどない




苦しさと涙しかないのなら




俺は絶対に

幸せにしてやりたい




一生…絢音の手を離さない……―――。