「…あのね…沙羅…悪いんだけど、今から人と約束してるんだ……」




あたしがそう言うと、沙羅は、申し訳なさそうな顔をして、手を振って帰っていった。




すぐに、また沙羅からメールが届く。




“約束って遊也くん?蒼から二人が付き合ってるって聞いたから。

沙羅ね、アメリカでずっと暮らしてたし、こっちに友達いないし、蒼と幼なじみの絢音ちゃんと友達になれたら嬉しいなって思ってたんだ。

だからすごく嬉しい。ありがとう!またメールするね!

沙羅”






あたしは沙羅にメルアドを教えたことを、すぐに後悔した。




蒼は…あたしと遊也が付き合ってること知ってるんだ…




遊也が蒼に言ったのかな。




蒼に知られたくなかった




蒼は…あたしが遊也と付き合ってて平気なんだね




当たり前か…


だって蒼は

沙羅を好きなんだもんね




蒼は、沙羅にあたしのこと、ただの幼なじみって話したんだね。




沙羅はきっと…悪い子じゃないと思う。




だけど好きになれない


友達になんかなれない




でもあんな顔されたら…頷くしかなかった




あたしは偽善者だ




でも沙羅が羨ましい……




こんなこと言ったら

神様は怒るかもしれない




声を失って

話せなくてもいい




蒼に愛されて

蒼のそばにいれるのなら




あたしは

声を失ってもかまわない