外は暗く、風も冷たかったから、沙羅をうちの玄関の中に入れた。




玄関の明かりをつけると、沙羅は穏やかに微笑んだ。




その笑顔を見て、あたしは胸が痛んだ。




彼女は、欠点を見つけようがないほどの美人だった。




ショコラブラウン色のゆるいパーマのかかった長い綺麗な髪。長いまつ毛、大きな瞳、色白な透き通るような肌。




華奢で背が高くて…チビなあたしとは大違い。彼女の姿に心の奥で嫉妬してしまう自分がいた。




彼女は白いメモ帳を取り出して、何かを書き始めた。




そうだった…彼女は声が出ないんだった。話せないんだ…




彼女はあたしにメモを渡した。




“私、声が全く出ない病気で話せません。
蒼の荷物、蒼の代わりに取りに来ました。”




――…ズキン




「あぁ…ちょっと待っててください…」




あたしは沙羅を玄関に残して、部屋に残っていた蒼の服、DVD、CDなどを袋に詰めた。




蒼がアメリカに行く時にうちに置いていった物。




何で今更……しかも彼女が…?