―――……
遊也が運転する車の中、
あたしは助手席で、顔を横に向けて、窓の外の真っ暗な景色をただ眺めていた。
遊也は何も言わず、ただ黙って運転していた。
カーステレオから流れる音楽に胸がぎゅっと締め付けられる。
「……ねぇ…この曲、変えてもいい?」
「……ええよ」
優しく微笑む遊也の顔を見たら、収まりかけていた涙が再び流れてくる。
「この曲…蒼が好きだった曲だから……聴きたくない」
「そやったっけ…」
「うん……」
信号が赤になり、交差点で車が止まる。
車の中は、遊也のタバコの香りと、芳香剤の匂いが混ざり、その匂いがなんだか妙にあたしを落ち着かせた。
遊也の手がハンドルから離れ、あたしの頭をそっと撫でた。
「泣きたい時は、泣けばええんや…」
遊也は、口にくわえたタバコに火をつけ、もう片方の手でハンドルを握った。
信号が赤から
青に変わる
低いエンジン音とともに、車がゆっくりと走り出す……
「遊也……ありがと…」
あたしは、静かに涙を流した……―――。