蒼が家を出て、一人ロサンゼルス郊外のホテルに泊まっていた所を、あの沙羅という女の子が見つけたらしかった。




その沙羅という女の子は、蒼に


“うちで暮らさない?”と告げ、蒼を連れ戻した。




聖…沙羅…
(ひじりさら)




ロサンゼルスで歯科医をしている父と二人暮らし。




父の名は、

聖 光一。
(ひじり こういち)




母親がいない沙羅に寂しい思いをさせないように、父親は、沙羅を大切に育てていた…というより溺愛していた。




いずれ日本に帰るつもりの沙羅は、アメリカで学んだ経験を生かして、歌手になる夢を叶える為にも、日本の大学で音楽を学びたかったという。




1つ年上の沙羅…蒼が高3になる前に、彼女は日本へと飛び立った。




…沙羅は、自分をすごく大切に育ててくれた父親を一人にして日本に行くことが辛いと、蒼に頼んだ。




そして、沙羅の父親も蒼のことを気に入っていたということもあり、沙羅の頼みを父は受け入れた。




蒼は、高校を卒業するまで、沙羅の父親と暮らすことになった…――。








運命の歯車が

どんどん狂ってく…―――





ごめんね…蒼




蒼はあたしを

何度も何度も助けてくれて




抱えきれないほどの

たくさんの愛をくれたのに




あたしは蒼を




たった一度さえ


助けてあげられなかった