バタンッ……――!




病室のドアが勢いよく開いた。




『…蒼…っ!』




スーツ姿の父ちゃんが息を切らし立っていた。




『……俺が殺した』




『蒼…それは違う。今、医者に話を聞いてきたよ。母さんは自分で死を選んだんだ』




『父ちゃん…俺がどんな酷いこと…母ちゃんに言ったか知ってんのか…?“死にたいなら死ね”って…あんな不安定な状態の母ちゃんにそう言ったんだぜ…?』




『蒼のせいじゃない…母さんが…弱かったんだよ』




『違うよ…俺が殺したも同然だ…』




世界でたったひとりの母ちゃんを




俺が…殺してしまった……




『蒼は何も悪くない…』




『…っ!父ちゃん…何でそばにいてくれなかった?約束しただろ…?だから俺、日本に帰ったのに…』




『すまん…蒼』




『約束…したじゃんか…』




『仕事の電話が入ったんだ……』




仕事…

仕事って…




またそれかよ…?




家族より

自分の妻より




仕事が大事か…




『仕事と母ちゃんどっちが大事なんだよぉ…っ』




俺に父ちゃんを責める権利なんてなかった…




行き場のない想いを

悲しみを

苦しみを




ただ…当てつけた




『こんな想いさせて…すまん……蒼……』




俺は永遠の眠りについた

母ちゃんのそばで




泣き続けた…――




父ちゃんも悲しんでいる




俺はそう思っていた




見せかけの涙


そんなもんいらなかったよ