…俺も…わかってんねん


蒼の気持ち、わかってんねんけど…




―――ツラい。




「兄ちゃん…飲み過ぎじゃないか?……大丈夫か?」




俺は、カウンターで酔いつぶれていた。でもちゃんと意識はあった。




「…んー?もう閉店時間やなぁ…おっちゃんまたな…」




俺は、カウンターのテーブルを支えにして、やっとの思いで立ち上がった。




「そんなフラフラで大丈夫か?」




「大丈夫、大丈夫…ぜぇーんぜん、シッカリしてるで?ごちそーさんした」




ズボンのポケットから財布を取り出し、カウンターの上に、五千円札を一枚置いた。




「兄ちゃん、おつり!」




「おっちゃんのタバコでも買ってや」




おっちゃんは渋々、おつりをレジの中に入れていた。




「気をつけるんだぞぉ?」




「大丈夫やって……ほなな」




ガラガラガラ……ピシャン…――!




おっちゃんに投げキッスした後、店を出た。




何してんねん…俺


キモいわ……




飲み過ぎたら…あかんな




「…っ…ップ…気持ち悪っ……」




吐き気が襲ってきて、そばの電信柱にもたれかかった。




生ぬるい夜風が身体にあたる。




「…何で…涙出てくんねん……」




俺は…絢音が好きで


絢音は…蒼が好きで




蒼も……―――。



俺は
蒼を裏切ったのに

蒼は
俺を許してくれた




こんな
どうしようもない俺と


友達でいてくれた




おまえの為なら

何でもする




絢音を幸せにするよ




蒼とした“約束”


必ず守る……




せやけど


涙が止まらへん……―――




今日だけは

おまえの為に




泣いてもええやろ……