「いま…協力出来ないって言ったわけ?」




一瞬、自分の耳を疑った。


さっきまで話していた明るい高い声とは違う、栞ちゃんの声…冷めた低い声が聞こえてきた。表情さえも違う。




なんか…怖い




「やっぱり好きなのね。蒼くんのこと…」




栞ちゃんの言葉に、頷くことも否定することも出来なかった。


明らかに先ほどまでの雰囲気とは違う栞ちゃんがそこにはいた。




「…ふ〜ん。せっかく友達になれると思ったのに…残念ね?」




「栞ちゃん…」




鳥肌が立つほどに、急に態度や声のトーン、目つきまでもがガラリと変わった。




「フンッ…幼なじみっていうだけで、偉そぉに…」




栞ちゃんは、あたしのおでこを人差し指でグイッと押し、睨みつける。




「蒼くんがアンタなんかみたいな女を好きになるわけないでしょ?可愛くもない、普通で、バカみたい。幼なじみだから、そばにいれるの気づいてる?」




酷い言葉に泣きそうになったけど、栞ちゃんの言うことは間違っているわけでもなかった。




蒼があたしなんかを好きなはずない。




幼なじみだから、あたしは蒼のそばにいられる。




「蒼くんは、絶対に栞のものにする…アンタなんかに協力を頼んだのは、間違いだったみたいね。じゃ…」




その場を去ろうとした栞ちゃんの左腕を咄嗟に掴んだ。




「何よ?離して」




栞ちゃんは、あたしの手を思い切り振り切った。




「アンタさぁ、蒼くんに気持ち伝えて、フラレんのわかってるから、何も言わないで側にいるんでしょ?」




鼻で笑い、上からあたしを冷めた目で見下ろす栞ちゃんを見て、背筋がゾッとした。




「…ずるいね、アンタって」