「絢音…これ…」




遊也は、スーツの胸ポケットから小さな箱を取り出しあたしの目の前に置いた。




「…なに?」




遊也はその箱をゆっくりと開けて、あたしに見せた。




「……なに…?遊也…」




あたしは驚きのあまり、手で口を押さえた。




「…あれからもずっと、俺は…おまえが好きやった…」




遊也の真剣な眼差しが、あたしの身体を一ミリ足りとも動かなくさせた。




「久しぶりに会って…こんないきなり…からかわないでよ…」




「からかってへんよ。本気や…」




「本気って…」




「おまえが大学出たら、俺と……結婚しようや……」




小さな箱の中で光る、ダイヤモンドの指輪…――。




遊也から、突然のプロポーズだった…――。




「今は…蒼のこと好きなままでええから…」




遊也はテーブルの上で、震えるあたしの手をギュッと力強く握った。




「俺は、この先、絢音のそばにおりたい…」




遊也が高校の時と変わらず、まだあたしを想ってくれていたことにも驚きを隠せなかった。




「俺が、いつか絶対…蒼を忘れさしたるから……」




蒼を…忘れる……?




「幸せにしたるから……」



“幸せにする…”




蒼が16才の夏、あたしに言った言葉…


アメリカから帰ってきたら世界一、幸せにしてくれるって……




17才の夏、結婚の約束をした……




永遠に愛してるって

そう誓った………




サヨナラを言われても


まだ蒼を信じてる




誰に何を言われても


あたしは蒼を待ってる




バカにされてもいいよ


どう思われたっていいよ




あたしは

蒼を忘れることは



絶対にできない………