「…父ちゃん……」




部屋のドアを開けると、父ちゃんが廊下でスーツを脱いでいた。




「…蒼、起きてたのか?」




「いや…目が覚めただけ」




父ちゃんの顔を見たのは、2週間ぶりぐらいだった。




「帰ってくるなんて、珍しいじゃん…母ちゃんのことも俺のことも、ほったらかしのくせに…」




「医者から電話もらってな。母さんのこと聞いたよ。蒼に任せっきりですまなかった…こんなに酷い状態になってるとは、知らなかったんだ」




それ…本心じゃないだろ…?




父ちゃんなんか…




父ちゃんなんか…




大っ嫌いだ………




「父さんから、病院に入ること母さんに話してみるよ。」




「やっぱりな…。父ちゃんは、すぐにでも母ちゃんを病院に入れると思ったよ。母ちゃんのこと煩わしいだけだもんな」




「現に、おまえも辛かっただろう…?母さんの為でもあり、家族みんなの為だ」




悔しいけど…父ちゃんの言うことは正しかった。




ほとんど父ちゃんが帰ってこない中で、俺がこのまま精神不安定な母ちゃんを面倒みていくのは、正直キツイ……