「初め聞いた時はね、絶対に別れるもんかって…そぉ思ったよ…?」




絢音は手で目をゴシゴシと拭う。泣いて震える声は何とも、か弱くて…俺まで苦しい。




「そうや…そんなんで別れたらあかんよ。まだ兄妹って決まったわけでもないんやろ?」




拭っても、絢音の涙は止めどなく溢れ落ちていく。




「でも、冷静に考えたの。たとえ…あたしと蒼が兄妹じゃなかったとしても…あたしたち幸せになれないと思う……」




「絢音……」




絢音の小さな肩に伸ばしかけた手を、元に戻した。




「もし兄妹じゃなかったとしても、蒼は…パパの不倫相手の子供になる。このまま蒼に隠して、ママに隠して…いつかバレるんじゃないかってビクビクしながら付き合っていくなんて、そんなのあたしには出来ない…」




俺は…何て言えばええんか、わからへんかった。




「きっと…生まれる前からあたしたちの運命は決まってたの」




俺は…今、おまえに何をしてやれるんやろーか。




「蒼が好きだから……あたし別れる……」




絢音を後ろから、ギュッと抱き締めた。




俺は、こうやっておまえを抱き締める事ぐらいしか思いつかへん、ダメな男や。




何もできひんけど、おまえが望むなら、望んでくれるんなら…




「俺は…絢音のそばにおりたいんやけど……」