まだ人気のない、早朝の駅のホーム。




空は、雲ひとつない青い空で、すがすがしい夏の朝だった。




俺は、大きな鞄を下に置いて、反対側のホームを見つめ立っていた。




16年間過ごしてきた、大好きなこの町とも…お別れだ。




………絢音がいるこの町に




サヨナラを言おう




目を閉じると…この町の匂いがした………




………





「蒼っ!」




俺を呼ぶ、絢音の声が聴こえる。




「……ハァハァハァ……」




俺は驚き、目をパチッと開けた。いるはずのない君の姿があった。




「…絢音……」




Tシャツに短パン姿で、たぶん起きたまますぐに走って来たんだろう…。




息を切らした絢音が、そこにいた。




「…っ…ハァ…なんで…?何で黙って行っちゃうのよ……!」




「ごめん……」




「……走って来る途中、みんなにも…急いで電話したんだから……」




――…まもなく、3番線に電車が参ります。危ないですから、白線の内側に立ってお待ちください…




電車のアナウンスがホームに流れた。