その日の夜中、眠っていた俺は、ふと目が覚めた。額に汗をかいている。今日は熱帯夜だな…
時計を見ると、真夜中の2時半だった。
俺はトイレに行こうと、部屋を出ると、絢音の部屋からすすり泣く声が聞こえてきた。
俺はそっと足音を立てずに、絢音の部屋のドア越しに耳をすませた。
「…美々ちゃん……こんな夜中にごめんね……」
高梨と…電話してんのか…
「…あたし…わかってなかったよ……蒼がいなくなること……ちゃんとわかってなかった……」
胸が締め付けられる思いだった。
「…美々ちゃん……今日ね、蒼と映画に行ったの…。たった10分くらいひとりで待ってただけ…でも蒼がこのまま帰ってこないんじゃないかって…あたし……急に怖くなって……」
映画を観終わっても、しばらく泣いていたのは、絢音も俺と同じようにあの映画と俺らの事を重ねていたんだな。
「…ごめん…不安定なだけだよね…。蒼には言えない。…蒼が決めたことだもん……蒼を困らせて嫌われたくない…」
わかっていた
絢音が
ムリやり元気にしていることぐらい……
こうなるかもしれないと
けど…だからと言って
俺には
何もできない……―――
行かないでって絢音に言われたら
俺はここにとどまるのだろうか?
俺自身もよくわからない
悔しいけど、悲しいけど
たった16才の俺に
出来ることなんて
何もない



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)