幼なじみ〜first love〜

蒼のその瞳から、目を逸らすことが出来ない。何故だろう。あたしの身体には血が流れているはずなのに、指ひとつ動かせない。




「…えっ…あの……」




あまりに驚いたから、咄嗟に言葉がうまく出てこなくて。




「母ちゃんが倒れてさ…俺と暮らしたいって言ってんだ。8月の最後の日…日本を発つ」




そう言った蒼の表情は、悲しみに溢れ、あたしの手首を掴む力はとても強くて。



これが夢だったら


どんなにいいかと




だけど夢なんかじゃないって


あたしはわかってた




強く掴まれた手首には、かなりの痛みを感じていたから。




「…いつ…帰ってくるの…?」




唇が震えて、涙が込み上げてくるのがわかる。




「ねぇ…っ!蒼……っ」




何度も何度も


心の中で


夢であって欲しいと唱え続けた





「高校の間は、戻れないと思う」




「…そんな…あと…2年半もあるよ…?」




蒼がいなくなっちゃう…


会えない場所へと


想像もつかないほど遠くへと




蒼がいなくなっちゃう…




「絢音、離れても俺は…おまえのこと好きでいる」




哀しげな表情をしていても、言葉を淡々と話す蒼の様子から、蒼の決意はすでに固いのだとわかった。




蒼がアメリカに…?




嫌だ…嫌だよ……




離れたくないって思ってるのは




あたしだけなの……?




蒼と離れるなんて…あたし


耐えられない…