幼なじみ〜first love〜

夏祭りの会場のそばには小さな神社がある。


その神社の賽銭箱の前には数段の階段があり、その階段前に、ケンちゃんと美々ちゃんは向き合って立っていた。


周りには誰もいない。




そう、あたしたち以外は。




“つけてきちゃったけど、覗きなんて趣味悪いよね?”


“なにおまえだけ、イイ子ぶってんねん”


“しっ!おまえら、うるせぇ”




蒼と遊也とあたしの三人は、見つからないよう木の陰に隠れて、二人の様子を近くで見ていた。




「ケンってばぁ…!みんなと離れて、一体どういうつもり?」




美々ちゃんは、いつものように強めの口調で、ケンちゃんの手を振り切った。




「……いろんなこと…あったな」




「何よ…急に……しんみりしちゃって」




「美々……」




「…マジメな顔しちゃって…なんなの…」




ケンちゃんは一歩、美々ちゃんに近づき、二人は見つめ合う……




「俺…中学ん時から…おまえのことずっと……「好きだよっ」」




ケンちゃんの言葉の途中で、美々ちゃんは“好きだよ”と言った。“好きだよ”の言葉が二人重なって聞こえて、あたしは驚く。




真剣なケンちゃんとは正反対に、美々ちゃんは軽い感じで、あっけなく好きだと言った。




「…はっ!?」




一番混乱しているのは、どうやらケンちゃんのようだった。




「だからぁ…あたしケンのこと、好きだよ?」




二人って…両思いだったんじゃん…うそ……




驚いて声を発しそうになったけど、慌てて口を両手で押さえ込み、蒼と遊也と顔を見合わせた。




「なっ…おまえ…マジかよ…。最後まで俺に言わせろよ…」




「ヘヘッ…あたしの勝ちでしたっ」




二人が両想いだったなんて、ちっとも気づかなかった。