外はまだ蒸したように暑い。夕暮れの空は一面、綺麗なオレンジ色に染まっていた。
歩く度にカラン、カランと下駄の音が鳴る。
ふと、蒼の横顔を見たら、あたしの視線に蒼も気付き、あたしたちは見つめ合って笑う。
「あーっ!来た来たぁー!このバカップルがぁー!遅いぞぉー!」
そう公園の前で叫んでいるのは、浴衣姿の美々ちゃん。
「ごめーんっ…みんな…」
美々ちゃんの横には、すでに遊也もケンちゃんもいて、あたしたちが来るのを待っていたようだ。
「美々ちゃん可愛いーっ!浴衣、去年とは違うのだねー!」
黒地にピンク色のユリの花の柄で、帯もピンク色。美々ちゃんに、すごく似合っていると思う。
「今年ね、新しく買ったんだっ。絢音がそう言ってくれて嬉しいなっ」
美々ちゃんは手の袖を持って、くるりと回って見せた。
「ちょー似合ってるよっ」
美々ちゃんは、前髪も上げてボンパにして綺麗な、おでこを出していた。
「ありがと。絢音も可愛いよっ」
美々ちゃんは、ぎゅっとあたしを抱き締める。
「はいはーい…可愛いお二人さん?そろそろ行くで?俺、腹へったやんか…」
遊也はあたしたちの浴衣なんて、まるで興味なさそうだ。それよりお祭りの出店が楽しみで仕方ないみたい。
「いこっか♪」
あたしたち5人は、祭りの会場へと向かって歩いた。
夏祭り……花火……
5人で過ごす
楽しい思い出になるはずだった……―――



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)