「蒼!おまたせっ」
なんとか時間までに、浴衣を着ることが出来た。ソファーに座って待っている蒼の元へ駆け寄った。
白に近い薄ピンク色の生地に、小さな花の柄が散りばめ描かれた浴衣。帯は赤色にした。
髪は浴衣に合うようにアップにして、髪飾りをつけた。
「どぉ?可愛いっ?」
あたしは左右に手を広げ、蒼の前でくるんと回った。
「別に…。…毎年見てるし……」
蒼の薄い反応に、あたしは不満げに頬を思い切り膨らませた。
「…可愛いんじゃね……?」
視線を外して、照れたように小さな声で呟く蒼。蒼の反応にあたしはようやく笑顔になる。
「よかった!蒼が可愛いって言ってくれてっ」
あたしは嬉しさのあまり、蒼の腕をグイッと引っ張った。
「早くいこっ♪」
「おぉ」
あたしは蒼の腕を掴んだまま、足早に玄関へと向かう。
「いってきまぁーす!」
一年に一度の夏祭り…あたしはずっと前から楽しみにしてた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)